8/12『ひゃくの鬼といちの唄』@福井HALL BEE

大分遅れてしまったのですが、ライヴレヴューを。

竹内真いぶきの路上ライヴツアー『シブキ』の地方遠征最終日、福井公演へ行ってきました。
"シブキ"の路上ライヴツアーの中で唯一のハコでの公演、思い立ったが吉日!というわけで、18きっぷを前日購入し旅行してきました。急遽2組が福井市コミュニティFMに出演することとなり、それを聴くためにと逆算したら始発しかない、というわけで、徹夜して始発に乗り込むとあっという間に眠りに誘われ…(無論乗り換えしまくりでしたが)福井まですぐ、って感じでした。新幹線とかだったら確実に降り忘れるくらいの睡魔だったので、18きっぷはある意味正解だったのかもしれません。


前置きはこのくらいにして。
今回の福井公演は、以前から四谷天窓で『福井deナイト』を主催するnaoさんが企画・招聘したもの。天窓でもライヴを行っている松田幸子さんが今回対バン相手だったため、特にnaoさん、松田さんを知る竹内真さんはやりやすかったのではないでしょうか。

ライヴは、今回スケジュールの都合で生MCが出来なかったノセジマンの、事前録音したイベント紹介のMCからスタート。MCふたりの独特の間合いでの会話が個人的にツボだったのですが他の観客が笑っていなかったようで笑いをこらえつつ。MC終了後に、松田幸子さんが蝋燭を灯り代わりにして一組目のアーティストをステージへ誘導。灯りに照らされる松田さんがちと怖いかなぁ、と思ってたら、実は昨年の四谷天窓でのイベント『四谷階段』に出演してたことをフラッシュバックで思い出した次第。


というわけで、出演順に紹介。


富田晋也

MCでのいい意味での不器用さが歌い方にも突出して表れた印象。声が着地点のギリギリまで真っ直ぐ伸び、尖らせたような強さを曲に沁み込ませるのに成功しているよう。例えるなら、古明地洋哉さんのような声の力で、好きな感じです。MCで買ったばかりのギターを"いいでしょ〜"と得意げに語る姿も嫌味なく自然で好感が持てました。


いぶき

開演前のセッティング中に、SEでかかってきたのが、いぶきのふたりが敬愛し、いぶきのツアー出陣前日に、彼らをオープニングアクトに起用してくれた後藤冬樹さんの「天窓」。これには私も、何よりいぶきのふたりもビックリ。実は、前述のnaoさんが今回のイベント用のSEを、四谷天窓にゆかりのあるアーティストの曲で揃えてくれたと後で判明したのですが、それにしてもいぶきライヴ直前になってこんなサプライズがあるのか…いぶきのふたりに力を与えてくれたかのような曲のプレゼントとなりました。
そして本番。ここでも彼ら独特の"ゆったリラックス"*1感が会場全体を包み込む、ぬくもり溢れるライヴとなりました。アウェーだろうがそんなこと関係なく、彼らの人柄そのままの一期一会の精神が曲をより真っ直ぐ伝えようとしているのが手に取るように分かります。
確かに疲れがピークに達しているのか、前半3曲終了後の声は若干トーンダウンした感は否めませんが、それを気合で乗り越え(特に最後の「コブシ」は圧巻。アップの曲調と声の気合いがこれほどうまく重なるとは!)、やり遂げたふたり。確実に成長していることを如実に示してくれるようでした。


ナナ・イロ

Vo.のあいさんとGt.のみっちゃんによる二人組。みっちゃんの天然ぶりが炸裂し、福井の逸材発見!と大袈裟ながら思ってしまった次第。MCであいさんが話す時にまじまじとあいさんを見つめるみっちゃんの純粋さが愛らしいです。
曲調は適宜にR&B風味をまぶした、格好いいPOPS。声の説得力やグルーヴィーさもその風味を増してくれるようで格好いいのです。女性が惚れる女性、と言っていいかもしれません。知っているアーティストで言えばDried Bonitoさんに近い感覚でしょうか。そのDried Bonitoさん同様、下北沢BIG MOUTHに過去に出演した経緯があり、ASIA SunRise*2と対バンしたこともあるとのことでライヴ終了後盛り上がりました。


竹内真

1曲目に「MY LOVER」を披露。正直意外でしたが(最近は「Sing a Song」や「against heart」が覆いはず)、過去にオンエアバトル熱唱編でオンエアに至ったときの曲を頭に据えることで、とりわけ番組を観た人を確実に引き込ませて行くことに成功。そこからは一気に駆け抜けていった感じがします(それだけ高い集中力を維持したステージといえるでしょう)。
MCでは当日出演したコミュニティFMでの出来事をちょっとした毒舌込みで話し(袖で観ていたいぶきのふたりからツッコまれるシーンも)、曲とは違った一面も披露。そして今回披露した6曲は、それぞれ異なったテイストを持ち、得意のバラードもアップ曲(路上ライヴで好評だった「星空ジャック」、ラストの「ふつうのうた」)も、説得力を持ち合わせた歌い方・演奏で曲の色彩を際立たせることに成功。沢山の側面を魅せることに成功していました。若干疲れがあって声が出にくくなっていたのは否めないものの、いぶき同様気合いで乗り越え、とりわけ「ふつうのうた」での気迫十分さは普段の穏やかな印象の強い彼から想像つかないくらい。真摯に歌に打ち込む姿がとにかく格好良かったですね。


⑤松田幸子

開演前に会った時の印象から一転、淡々と暗闇の中を歩むような、MC無しのステージ。怪談(怪談自体は話してませんが)がこんなに似合う、青と赤の照明にとにかく映える方も珍しくらい。怖いというのも確かにありますが、暗い曲調の中にもぬくもりが漂っている、というか。ただ単に暗いだけではない、自身の独特の世界観がステージ全体に漂っていました。
"暗さ"という点でいえば、今月の『四谷階段』で登場した渡辺都さんと印象が被るかもしれませんが、声の特徴が違っていて、都さんの声には尖りがあり(曲調によっては丸い声にも)、一方で松田さんは尖るというより、やんわりと語るような感覚。語りのような曲に浸っていくうちにどんどん引き込まれていくかのようでした。



というわけで、全5組のステージが終了。
アウェーでのステージがどうなるかな、と思いましたが、心配は杞憂でしたね。どの場所でも全力で歌い上げるいぶき、竹内真さんの姿に感銘を受け、そして福井の地元の3組のそれぞれの特色を最大限に引き出したステージも格好良かった、素晴らしいイベントとなりました。全てのライヴアクト、そしてイベント主催のnaoさん(ライヴ後、宿泊施設まで送ってくださりありがとうございました)に感謝。

*1:いぶきのコンセプト。

*2:アコースティックギターやっている方に是非聴いていただきたい、素晴らしい方です。