9/4天窓オリンピック@四谷天窓

ライヴ週間の最後となったイベント、天窓オリンピックに行ってきました。
最高の瞬間に立ち会うことができました!


ちなみに、四谷天窓の天窓オリンピックの開催内容はコチラです。


述べ149日間、出場48組のアコースティックミュージシャンの頂点を極めるのは誰か! 天窓オリンピック決勝戦、その運命の日を迎えました。決勝戦に勝ち上がったのは下記の3組。
・太田修
・後藤冬樹
・United Master Kitchen
後藤さん、およびUnited Master Kitchen(以下、ゆな吉)は以前から存じ上げていて、それぞれのアーティストとも仲良くさせていただいているのですが、太田さんは初観賞。太田さんは準決勝で優勝候補の一角、ヨシケンさんを破ったということ。いずれにせよ誰にという肩入れはせず、まっさらな気持ちで、各アーティスト10点満点採点を公正にジャッジしようという姿勢で臨みました。


日曜昼の四谷は携帯会社のアンテナショップも空いてないという閑散地帯。にもかかわらず、四谷天窓は四谷全ての興奮を一手に受けたかのような大盛り上がり大会! ジャッジが開演前に会場入りしないとできないこともあって、開演時にはすでに満杯の観客で興奮状態となりました。さすがに普段冷静を心がける自分も緊張状態。しかもゆな吉と大親友の川端深雪さんは普段の明るいキャラとは正反対、緊張しすぎで胃が痛いという状態。普段のライヴでは見せないその状況に、今回の決勝戦の"特別な空気"が分かるというもの。無論、それは司会の代々木原シゲル(アーティスト名義)こと天窓スタッフのけんと君にも伝わってて、普段のムードメイカーぶりは若干潜め、その分隠された(?)イケメンぶりが登場してました。


ちなみに、司会のけんと君、そしてPAのyukky(彼女もアーティストで、且つ天窓スタッフなのです)は計22試合の戦いを天窓サイドとして見守ってきました。本当にお疲れ様です!


会場は最前列にライヴ観賞仲間の親子等が、最後列の座敷(天窓は座敷も名物なのです。ゆったりとくつろげます)にも前述の深雪さんの友人等がいたのですが、真ん中あたりは太田修さんのファンがこぞって座っていて、冬樹さん、ゆな吉の二組にはかなりのアウェー状態だったのではないでしょうか。そんな中、ライヴ前のくじ引きで決まった通りにライヴはスタート。興奮状態をさらに掻き立てるゆな吉の二人が登場です。


United Master Kitchen(ゆな吉)
ライヴ観賞は9/2@西荻窪以来(9/2レポートは後日記載します)。おこがましい言い方を覚悟で書くと、ここ最近確実に、というよりもの凄い勢いで成長しているふたりの姿を、確かに観ることができました。
ヴォーカルの薬師寺さんの力強い歌声が圧巻のオープニング、どんな荒野をも切り開く勢いのある声が、ベースのチキちゃんの奏でる音に乗ってより強く響いてくる感覚。歌詞のない叫びとも誓いとも取れる"ウォー"の言葉がこれほどまでに言霊と化して心に響いてくるとは。この歌が始まった瞬間に圧倒され、と同時に緊張に動じることないいつものゆな吉スタイルで来てるな、と実感。
途中のMCでは天然ボケ担当のチキちゃんがかましまくり(あまりに独特のMCで例えようがないくらい可笑しい)、そこもいつもの姿。さすがに若干の緊張が残っているのか、ステージを降りて水を取りにいくという行動(ステージ降りるという行動に笑ってしまいました)も。さらに今回は1曲分の時間を割いて心理テストを実施。観客の心を捉えようとする姿勢も見て取れましたね。でもそれならば、贅沢を言えばもう1曲やってほしかったな、と正直なところ思いました(それだけ歌に凄まじさがあり、もう1曲、もう1曲と聴きたかったのです)。
嬉しかったのは、ゆな吉がこれまでにはないタイプのバラードを披露してくれたこと。バラード曲は何気にあるのですが、力強いヴォーカルの曲ではなく、淡いタイプの曲も聴いてみたいという衝動に駆られていたのです(9/2に披露した「高速道路」という曲がこれまでにないブルースタイプの曲で、その曲に乗る薬師寺さんの声が実にうまくハマっていたのです)。今回披露したのは、何と薬師寺さんが初めて人のために書いたという曲。いつもの笑いを交えた曲紹介ではなく(一部チキちゃんのボケは入ったものの)、真面目に曲のいきさつを紹介する姿勢に、この曲への、そしてこの瞬間への思いの深さを感じました。曲の穏やかさに宿るノスタルジア、そして深く時にブルージー薬師寺さんの声の中に宿る友への温かな思い…強靭な喉の持ち主である薬師寺さんの、新たな表現力を見出した気がします。
着実に成長を続け、そして音楽に真摯に、楽しく向かっていくふたりの雄姿が、彼等の曲のタイトル、「キラキラ」の言葉通りに感じることができました。ベストライヴに数えられるものだと思います。


②太田修
初観賞。1年と少し前に天窓でライヴデビューを果たし、1年後にこのステージに立っているというのは凄いことです。緊張は隠せないようでしたが、ピアノの方(名前失念…ごめんなさい)とともに堂に入ったステージを展開してくれました。
曲は穏やかなものが多く、ゆな吉を"動"とすれば、太田さんは正反対の"静"のイメージ。ただ(逆説の接続詞はあまり使いたくないのですが、観客=得点を付ける者、としては厳正に見ないと思い、ちょっと辛口になってしまいました。申し訳ありません)、これぞ!というフックがサビにあまり見られなかったのが勿体無いと思ってます。
声は深みに欠けるきらいはあれど、山崎まさよしさんにテイストが似ている気がして広範囲に受けそうですから、例えばより深みを持たせ余韻の残る声を身につければ聴かせ方も変わってくるように思います。またピアノとの相性ですが、ギターで曲を作っているのか、ギターに生えるメロディラインで曲によって若干整合感に欠けるように思います。ギターは巧く、堂に入ったステージをこなせているのですから、曲によってギターのみ、と切り替えてもよかったかなと思うのです。
惜しかったのは、唯一のアップ(出だしのノリやファンク風味の曲)にてピアノとの乖離があり、リズムにもたつきが2度あった、という点。アップで新たな側面が見れると思ったので、ちょっと勿体無い気がします。しかもこの後の登場がファンクも歌う後藤冬樹さんだったのですからここでの失点は痛いと考えます。


と、かなり厳しく書いてしまいましたが、実際どうなるか分かりません。

会場は太田さんのファンが最も多かったようで、どのような採点になったのか、凄く気になりながら、いよいよ最後のアーティストへ。


後藤冬樹
後で聞いたところ、かなりの緊張に包まれていたとのことでしたが、そんなことを微塵も感じさせない、堂々と自信に満ちた風格あるライヴ。見事なまでの存在感を示してくれました。
オープニングの激ファンク2連発からして凄まじい迫力! 獅子の雄叫びのような力強さ。名刺代わりの「あの日のアイロニー」で魅せた"これぞ真のファンクだ!"精神が観客に荒波の如く伝わってくるよう。
ライヴは緩急、そして時にファンシーな曲も織り交ぜた全7曲。そのどれをとっても後藤冬樹節全開!と聴く誰もが納得するであろう1曲1曲のレベルの高い曲達。そしてそこに心を深く、強く込めた歌声が乗ることでワンアンドオンリーの世界にまで高めてくれるのです。曲紹介時に若干の間違いはあれど、それを上手く観客を乗せる術に変換したのも凄い(経験がものをいったのかもしれません。ともかくライヴ巧者なのです)。しかもファンク、バラードと来て、犬をモチーフにしたファンシーな曲につないだ時も実に堂々とファンシーな曲を奏で上げ、終いには「あの日のアイロニー」でほぼ微動だにしなかった太田さんファンの方々をも動かし、拍手をさせることに成功したのです。素晴らしい音楽には抗う事ができない、ということを彼らが示しているかのようでした。その瞬間がカウンター席から見られた時、後藤冬樹さんの凄みを改めて強く感じました。
圧巻の瞬間は、挙げると本当にキリがないのですが、8/26ライヴでも披露してくれた、「エンドロール」の、イントロに「Calling You」を据えたヴァージョン。ファンク2曲で会場のボルテージを沸点くらいに上げた直後に一気に場面を転換させ、恋人を失った痛みの待つ世界へ一気に導いてくれる歌の力たるや! 曲の間中ずっと鳥肌が立ちっぱなしで、どっぷりと曲に浸りました。そして「夏の終わり」…夏への惜別を、思い出を噛み締めるように、そして観客ひとりひとりの夏の想い出を想起させるように優しく歌い奏でる姿が心地よく、そして切なさがウワッと沸いてくる感覚に襲われました。いずれも、歌の力、そして歌い奏で上げる後藤冬樹さんの力を感じずにはいられません。
会場の最後列ではゆな吉のふたり(ライバル心とやらではなく、冬樹さんを慕うふたりの姿がありました)や川端深雪さん、冬樹さんを慕ういぶきのやす君等仲間がありったけの声援を送る姿が。彼等の愛情を一心に受けて歌われる冬樹さんの姿は、確実にこの日初めて観ることになった観客の方々へもまっすぐに届いたはずです。ゆな吉の時にも感じましたが、さらなる"歌の力"を感じずにはいられませんでした。


そしていよいよ発表!
正直、最後の発表の瞬間まで、これほど緊張し胃が痛くなったことはありませんでした。"歌の力"が真に伝わったことを願い、祈りながら、それでも全く結果の読めない今大会決勝戦…けんと君の発表を待つ時間の1秒が、例えようもない長い時間のようです。


発表は2位から。



2位はUnited Master Kitchen!
ゆな吉が観客を魅了した証! 見事に花を咲かせました。演奏のとき以上の、屈託のない純粋な笑顔が彼等の達成感を示しているようでした。おめでとう、ゆな吉!


そして、いよいよ1位の発表!


店長の吉川さん自らが、今回の優勝商品として作成した天窓特製ギターを渡すことに。そして吉川さんがコールした名前は…



"後藤冬樹さんです!"


コールの瞬間の歓声の凄まじさたるや! ゆな吉のふたりも自分たちが勝った以上に冬樹さんの優勝を祝福し(ゆな吉のふたりは、冬樹さんと対バンできたことそのものが凄く嬉しかったのだと思います)、観客も、冬樹さんファンはもちろんのこと、太田修さん(冬樹さんと太田さんは初の対バンでした)のファンも拍手を止めませんでした。
冬樹さんは、これまでの緊張から解放されたかのように、そして優勝の喜びを全ての人へ賛美するかのように、コールの瞬間に膝から崩れ落ちていきました。これほどまでに巨大な歓喜の力が溢れ出した瞬間は他にないと言っていいでしょう。


まさに"歌の力"が実証された瞬間でした。



神聖なギターは冬樹さんの手に渡り、初めて奏でられた音色は「天窓」。冬樹さんが天窓への敬意と愛情を注いで紡ぎ上げた曲です。
冬樹さんはこのギターにどんどん自分の色を宿し、そして天窓に、天窓に来る全てのアーティストに、そして全ての観客に天窓ギターで愛情を注いでいくことでしょう。時にユーモラスに(「天窓」ではギターを贈呈した吉川店長がネタにされてました)、時に真剣に、音楽に常に最大限の力で向き合う冬樹さん。本当に最後まで素晴らしすぎます。格好良すぎです!


後藤冬樹さん、本当におめでとう! これからもどんどん素晴らしいステージでもっともっと多くの観客を魅了してください!!